地域ケア「避難所指定施設における健康保持のための温度変化の計測と啓発活動」の活動を報告します(3)

2024/11/29

第3回:倉庫をお掃除ロボットで掃除する!

こんにちは。本事業を担当している心理学教員の松田です。
本事業では、避難所の温度と湿度を1年を通して計測し、より良い過ごし方を模索するための判断材料を創出することを目的として活動しています。
今回は番外編という内容ですが、倉庫をお掃除ロボットで掃除してみました。これは単なる好奇心だけではなく、案外重要な意味があります。

 

能登地震に類する規模の災害が起きた時や、災害が短期的に連続したと仮定した場合、行政から指定されている避難所で避難者を収容しきれない場合があるかもしれません。能登地震後は近隣の市町村の空き家の所有者に行政から連絡があり、避難先として使用できないかどうか検討がなされました。これと同じように、最悪の場合、市民が所有している大きめの倉庫やビニールハウスまで利用せざるを得ない場面が想定できます。(※ただし、地震で崩れる危険性は十分にありますので、状況に合わせた判断が必要です。)
急に倉庫を利用するとなったとして、現地はどうなっているでしょうか?よく手入れされていれば良いのですが、一般には埃、砂、木屑などが溜まっているでしょう。また、比較的綺麗だったとしても、避難生活が長期に及んだ場合は掃除する必要が出てきます。倉庫に限らず、体育館や公民館に集団で避難している場面でも同じで、いつか、必ず掃除は必要です。
では、広い施設をほうきや掃除機で掃除する気力、体力があるでしょうか?あれば良いのですが、避難生活が長期化した場合、なかなかそこまで手が回らないというのが正直なところだと感じます。

 

そこで今回の主役が登場します。掃除はお掃除ロボットに任せるんです。ロボットは疲れません。何度でも、何時間でも掃除をやってくれます。また、1台あれば、複数の施設、建物を順番に掃除して回ることもできます。こう考えるとお掃除ロボットは避難生活の衛生を守るために極めて有用といえるでしょう。
しかし、問題が一つあります。それは「果たしてお掃除ロボットに倉庫の掃除が可能なのか?」という問題です。体育館など、床が綺麗な場合はこの問題は生じません。ですが倉庫は話が違って、コンクリートが剥き出しであり、さらに表面加工がしていないざらざらな面であることがほとんどだと思います。つまり、正常に走行できるかわからないわけです。
また、お掃除ロボットは比較的高価です。その高価なものを、明らかに汚い倉庫で走らせるというのは心情的には嫌なものでしょう。???大丈夫です。私が試してみます。

 

以上の観点から、今回、倉庫をお掃除ロボット(ルンバ960)で掃除してみました。始めに走らせた時に、農機具などの隙間に入り込んでしまって掃除が不可能となってしまいました。ですので、倉庫内にある木の棒を使い、行って欲しくないところは道を塞ぎました。再トライした結果、時間はかかりますがちゃんと掃除してホームベースに帰っていました。

 

 

 

広めの倉庫で検証したため、成功した時には驚きました。また、問題点も発見しました。走行すると床のコンクリート面に接する部分がこすれてしまっていました。やすりがけしたようにザラザラに削れてしまっています。このまま何度も走行するといずれ穴が空いてしまって故障するでしょう。

 

 

そこで床に接する部分に養生テープを貼ってみました。養生テープがなければガムテープでも構いません。素材はなんであれ、1回の走行の間だけ防護できれば良いんです。写真にあるように養生テープを4枚ほど重ねて貼り付けました。

 

結果は予想通り。養生テープが本体の擦れる面をうまく防御しながら、お掃除は完了。ゴミは細かい砂や大きめの葉っぱも掃除していました。何度か掃除させてみると、養生テープが擦り切れてしまいますが、そこは使い捨てと割り切ります。何度でも貼ればそれでいいんです。

 

さて、今回は温度ではなく掃除がメインテーマでした。たとえ倉庫であっても、掃除はお掃除ロボットに任せることができる。これを今回は実証しました。特に学校や体育館のような広大な施設で避難している場合はお掃除ロボットの活用が有効だろうと考えます。床の状態が悪い倉庫ですら掃除できたのです。掃除は疲れないロボットに任せてしまって、人間は気持ちと体力の温存を図る。これも避難所生活の工夫の一つでしょう。

 

※本活動は石川県立看護大学令和6年度地域ケア総合センター事業と大学コンソーシアム石川2024年度地域課題研究ゼミナール支援事業(復興支援枠)の支援を受けて行われています。