石川県立看護大学 平成25年度入学式式辞(2013年4月5日) 2013年4月5日 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。お集まりのご家族、関係者の皆様、お忙しいところご列席くださり誠にありがとうございます。 ここにおそろいの看護学科1年に入学する84名、3年次に編入学する9名、大学院博士前期課程に入学する10名、博士後期課程に入学する3名をお迎えし、教職員一同大変嬉しく感じております。 社会がますます看護職を必要としている今日、皆様がこの大学に入学して学ぶことは、石川県をはじめとする地域社会のもっとも期待することのひとつです。大学としても皆様の向学心に応え、そして立派な看護職となって巣立つことのできるように今日から教職員一同、雨の日も風の日も、ともに歩む思いと覚悟で皆様をお迎えいたします。 この石川県立看護大学は2000年に創立され、皆さんは第14期の入学となります。卒業した先輩たちも881人になり、たくさんの先輩がこの石川県でも働いています。これから勉強に出かける病院でもきっと笑顔で皆さんを出迎えることと思います。皆さんは、ここに並んだご来賓の皆様、ご家族、教職員一同ばかりでなく、先輩たち、市民の方々からも見守られ、期待されていることを忘れず、今の思いを素直に成長に繋げていただきたいと思います。 一方、日本では医療の高度化が進み、また人々のライフスタイルの多様化に伴う看護職の高度な実践力や研究能力に対しても、期待が高まっております。看護系の大学もそれに応えるべく自覚を高め、専門看護師をはじめとする専門性を持った看護職の輩出にも力を注いでおりますが、本学も大学院を備えて社会の要請に応えてまいりました。本日入学される大学院博士前期課程、後期課程の皆様におかれましては、この看護学研究科でしっかりと学び、高度の看護実践力や研究能力を身につけて、皆様の計画しておられるキャリア発展に役立てるとともに、社会の期待に応えていただきたいと思います。教職員一同、精一杯皆様の努力を前引き後押しし、皆様の満足した修了をともに喜び合いたいと考えております。 さて、日本社会は団塊の世代が75歳を迎える2025年を前にして、今からその時のためのシステムを作って備えようとしています。2025年問題と称されるこの問題は、この大学のすぐ近くの地域、たとえば奥能登、中能登ではすでに到達せんとしている状況、到達した状況にあります。そのような中で、この石川県立看護大学は、その地域に最も近い大学として、地域社会に若いパワーをもたらす存在として注目され、皆さんが地元のかほく市を始め、地域社会を訪れることが大いに期待されています。 また、高齢化先進地ともいえるそのような地域では、身の回りレベルの地域の歴史や文化に逆らわない自然な考え方や助け合いが生まれており、日本が準備しようとしているシステムの参考になることがたくさん潜んでいます。皆さんがその場に身をおいて考え感じる機会を持つことは、一生の宝になる勉強が出来るチャンスでもあると本学では考えております。大学院生の皆様にとっても日本全体を俯瞰する勉強ができる機会、また社会に即役立つ研究の機会にもなると考えております。 世間ではこのことを「大学による地域貢献」と称していますが、貢献というよりは、教職員も含めて学ばせていただくというほうがぴったりする表現ではないかと思っています。ともかく、このように地域社会側が大学に門戸を開いて下さっている状況が生まれており、喜んでそこで学ばせていただくことが大切なことです。 本学はこのような姿勢で地域とのつながりを強めてまいりたいと思っております。 皆さん、このように大学というところは教室で学ぶばかりではありません。一人ひとりの個性に合わせてやっていただきたいことがたくさんあります。たとえひとから青臭いといわれようが友達?他大学の学生?大人と世の中について意見を闘わせることや、音楽や文化的な体験をすること、インターナショナルな挑戦をしてみること、今述べた地域社会の生活に触れること、地域の行事に参加することなど、いろいろあります。キャンパスライフと総称するさまざまなことは決して寄り道ではなく、皆様にとって本道でもあり、大学生の特権でもあります。大学院生の皆さんも同じキャンパスで学ぶ立場で一緒になってさまざまな体験をしてください。異世代の交流は双方にとってとても大切なことです。 次に看護界に目を転じると、冒頭に申し上げたように看護師の質量の拡大が課題です。本学では地域社会の求める看護職を養成する姿勢と実現を大切にしており、新皇冠体育センターを平成25年度中に立ち上げる予定です。そのほかにも本学には従来からの看護や介護に関する事業の展開が多数あり、看護界と足並みをそろえた大学院の改革も進めている状況です。皆さんは早速多様な研修生の存在や忙しそうな教職員の様子に気づき、驚かれることと思います。 ところで、たくさんある大学の中で本学の特徴は看護の教員、人間科学の教員、健康科学の教員と、専門のちがう教員が学際的に融合して皆様の教育に当たるという点です。ここで学ぶ皆さんには、幅広い知識が広い視野をともなって看護学の知識技術と一緒になって注がれます。皆さんがこれから看護職として出会うのは、経験も考え方も違う一人ひとりであり、懸命に与えられた生を貫こうとしている存在です。そういう人たちに寄り添い、不安を除き、叶うだけの安楽を提供し、生死のプロセスを支援するには、このような本学の教育が必ずや力になると考えています。大学院においても同じです。学際的な本学の教育体制の利点をきっとすぐに感じ始めることと思います。 これから皆さんは看護師?保健師を目指した勉強、専門看護師や教育研究能力を高める勉強に取り組みます。大学では誰かに勝つことではなく、自分を高めることや自分を知ることに努めることが大事です。そして特に命にかかわる看護の仕事では、瞬時瞬時に問題を見つけ、適切な対応が取れる能力が求められます。そのためには、一生勉学を続ける姿勢を身に着けることが大切です。これからは忙しいけど楽しい、苦しいけど満足、大変だけど自信につながるという体験を重ねて豊かで実りある大学生活を送って下さい。 最後になりましたが、ご列席たまわりました谷本石川県知事ならびにご来賓の皆様に厚くお礼申し上げます。 本日は穏やかな日となりました。 今日の日から教職員一同皆様と歩むことを誓って式辞といたします。 学長 石垣 和子