石川県立看護大学 平成27年度韓国看護?文化研修 平成27年度韓国看護?文化研修 本学では、文部科学省の「大学間連携共同教育推進事業」として平成24年度に採択された『学都いしかわ?課題解決型グローカル人材育成システムの構築』の一プロジェクトとして、「ヒューマンヘルスケア人材育成プロジェクト」事業に主体的に取り組んできました。その一環で、石川県の友好交流地域である韓国全羅北道全州市にある国立全北大学看護学部との間で平成26年11月に覚書締結を行い、様々な地域住民の健康づくりにアプローチできるグローカル人材の育成を目的に、今年度にアジアをフィールドとする本学初の看護研修を行いました。 平成28年3月20日(日)~3月27日(日)の8日間のプログラムで行われ、本学から14人(1年1人、2年6人、3年1人、4年1人、院生2人、教員3人)が参加しました。 全州完山保健所の見学(職員の皆様とファイティーンポーズ) 主な研修内容 研修1 講義 内容:韓国の看護教育?健康課題と対策について 講師:全北大学看護学部長 研修2 保健医療福祉施設 ① 都市部のフィールドワーク 全北大学(国立の総合大学) 医療機関(全北大学病院) 保健所(全州完山保健所) 高齢者福祉関連施設(金堤老人専門寮蘘院) 母子保健福祉関連施設(園光大学漢方病院) ② 農村部のフィールドワーク 保健診療所:処方権を持つ看護師が運営する保健診療所(金堤サンジョン保健診療所) ③ 高齢者福祉関連施設(敬老堂?グループホーム) 研修3 全羅北道内、ソウル市内の歴史文化施設等の見学?体験 全北大学見学(手術室?実習室) 全羅北道庁表敬訪問(対外協力局長表敬、国際交流課チーム長を囲んで) 金堤サンジョン保健診療所(所長さんを囲んで) 活動報告(引率教員:塚田久恵、木森佳子) 8日間の研修を通して、学生たちは研修の目標として掲げた「①韓国の健康課題と対策について理解 する。②韓国の町中心部、かつ過疎地域での看護職の活動を理解する。③韓国の保健?医療?福祉システムを理解する。④韓国の看護実践およびその背景にある価値観について理解する。⑤文化交流およびコミュニケーション能力を高める。」については、全体としては、ほぼ達成できたのではないかと思います。しかし、今回参加した学生は1年生から院生まで年齢の幅が広く、1、2年生にとっては、多少難し点もあったのではないかと思いますが、韓国の保健?医療?福祉の考え方にふれることにより、日本の保健?医療?福祉について、さらに興味?関心が高まったのではないでしょうか。 本研修のプログラムは、短期間でありましたが、視察が午前午後に組み込まれ、ハードスケジュールでした。しかし、学生は、大変よく学び、また、全北大学の学生との交流においては、言葉の壁を飛び越えて仲良くなり、大変有意義な時間を持つことができました。さらに、全州市の住民とも思わぬ交流の機会もあり、韓国で暮らす人々の暮らしぶりや価値感、やさしさ、国民性など現地に身を置き、交流しなければわからないことの多くを学ぶことができたのではないかと思います。 今回の貴重な体験を、今後の学生生活や将来の仕事などに是非活かしてほしいと思います。 韓国看護研修に参加しての学び?感想(一部抜粋) (平光水城 2年) 研修をとおして、日韓が直面している課題の多くが共通していることに気づいた。例えば、施設見学で話題に挙げられた少子高齢化?家庭内暴力?孤独死?ホームレスなど。これらは、日本でも大きな課題として取り上げられている。韓国では、一人暮らしの高齢者が自宅近くで夜のみ宿泊できる施設があり、これが一人暮らしの高齢者の孤立化を防ぎ、孤独死防止に繋がっている。日本とはまた違った方法で解決を図っている国から学ぶことは沢山あるような気がする。今後さらに交流を深め、共通の課題に対して両国の強みを生かし、解決していくことが出来たら素晴らしいことだと思った。 全体として、異国との交流の楽しさを実感した。文化や歴史が違うからこそ学べたり視野が広がったり、違うのに分かり合えたりというように“違い”の中に交流の価値や面白さを感じた。また、その場に出向いて人と関わったり思いを伝え合ったり、自分の目で見たり聞いたりするからこそ、細かい魅力を発見したり、その国の一人ひとりの暖かさに気づくことができたのだと思う。 (高科 瞳 3年) 特に印象に残ったプログラムは、産後ケアサービスセンターと漢方病院である。妊婦は医療薬によって内服できない薬もある。しかし、韓国では漢方医療が充実しており、漢方を使用し妊婦や褥婦に対して安楽?安心感を与えることにつなげていた。また、診断名が判明するまで経過観察するのではなく、漢方を用いて対症療法を行い、早期から対応しているところが日本と違うと思った。今回の研修では、1日1日の学びが深く、また韓国の方々との交流も行うことができ、貴重な体験ができた。1週間と短期間の研修ではあったが、講義?施設見学、現地の方々との交流は充実しており、日本と韓国の保健医療福祉活動の相違点?共通点について理解を深めることができた。私は、将来、日本だけでなく、海外で活動したいと思っている。そのため、日々発展する医療や自身のさらなる語学力?コミュニケーション力向上に向けて今後も学び続ける姿勢を大切にし、また多くの方と関わり、より豊かな人間性を養えるように一つ一つの経験、人との関わりを大切にしていきたいと思う。 (長田菜摘 4年) 私は、今回の韓国看護研修に参加して「百聞は一見に如かず」ということを強く感じることができた。私がこれまで抱いていた韓国や韓国の生活などに対するイメージは実際とは少し違っていて、韓国に行き、初めて韓国の医療?福祉施設や住宅?観光地などの場の雰囲気、聞こえてくる音楽などを感じることができた。また、実際に韓国の食べ物や人と触れ合って初めてキムチの辛さや韓国人の話し方、趣向、価値感、生活などを知ることができた。これらは、自分が実際に韓国に行ってみないと興味を示さず、他人から韓国について教えてもらうときに聞きたい項目から漏れて、知らないままになっていたと思う。これは、韓国だけではなく日本でも、石川県でも、奥能登地域でも同じことが言えるだろう。「同じ日本だから」、「同じ石川県だから」と分かったつもりで自分の気になる?興味のあることだけに注目してしまうと、実は大事なことを見落としてしまう可能性もある。この教訓を胸に保健師として働くときも、自分が実際に見て?聞いて?感じた上で考えたり判断できるようになりたいと思った。この気づきが後に大きな成果であったといえるようローカルな問題に取り組んでいきたいと思う。 文化歴史体験(韓服を着た学生が、韓屋村で偶然出会った保健所の看護師さんや高齢者と一緒に、リズミカルな音楽に合わせて介護予防体操をしました)