石川県立看護大学

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平成23年度卒業式式辞(2012年3月17日)

2012年3月17日

 梅のつぼみがふくらみ始め、春がすぐそこに来ています。
 本日、石川県立看護大学第9期生となる84名がめでたく卒業の運びとなりました。また、石川県立看護大学看護学研究科博士前期課程5名、後期課程1名が、めでたく修了の運びとなりました。
 ご来賓の皆様、本学のよって立つところの石川県、そして石川県公立大学法人の皆様におかれましては、お忙しいところご列席くださいましてありがとうございます。また、保護者の皆様にも本日のご参列にお礼を申し上げると同時に、これまでのご協力に感謝し、お子様のご卒業に対して心よりおめでとうと申し上げたいと存じます。
 このような大勢の方々に囲まれて、卒業生?修了生の胸にも教職員の胸にもこの大学でのたくさんの出来事や思い出が去来していることと存じます。
 卒業生の皆さんは、看護職となる道のりは、楽しいことばかりでなく、厳しいことの方が多かったのではないでしょうか。一度つまずいた方も中にはいらっしゃるでしょう。ご卒業の皆さんは努力をしてそれをクリアして今日の日を迎えたのです。
 ただ今、一人ひとりに卒業証書をお渡ししながら、この証書は今までの学びのプロセスと今後の人生をつなぐ、大切な証しなのだと痛切に感じておりました。これからは一人ひとりが実社会の風に当たります。倒れぬよう、吹き飛ばされぬよう、しっかりと両脚で立ってもらいたいと思います。大変なことはあった時には、共に学び共に遊んだ仲間、大丈夫だろうかとドキドキしながら見守る教職員がいることも忘れぬようにしてください。
 修了生の皆様は、多くの方がお仕事をしながら学業を貫かれました。修士論文、博士論文にまとめ上げるにはどんなにか努力をされたことと思います。今後は、看護学を発展させる仲間として、看護実践現場の方々や私どもと自信を持って歩んでいただきたいと思います。
 さて、数日前には大震災からの復興もまだ道半ばという日本の現実があらためて如実に写し出されました。本大学では、つい先日、宮城県亘理町に遅ればせながら第1陣15名の学生が3名の教員とともに行ってまいりました。震災の爪痕は何気ない日常の中に深く食い込み、傍観者ではいられない何かをこちらに訴えかけていました。卒業生の皆さんにはたくさんの時間があったにもかかわらず行く機会を作ってあげられませんでしたが、今後、ヒトとしてあるいは看護職として機会をとらえて積極的に関わっていただきたいと思います。
 震災に関係して一冊の本を紹介してくれた人がいます。それは原子力の研究者のうち、目立たないけれども良識的であり続けた研究者のとった行動の記録です。専門家であるが故の良心のもとに測定器を持ってまだ状況がよくわからない時期の現地に入り込んで調べたのです。防護服こそまとっていたものの、身の危険については犠牲も覚悟していたのではないかと思われます。記録はとても貴重な存在となっているとのことです。
 このことから人はいろいろなことを学び取ることと思いますが、私は卒業生の皆様に一つお伝えしたいことがあります。コツコツと真実をつかまえて歩くことの大切さをわかっておいていただきたいということです。科学の発達した今日、逆に科学が発達したからこそ聞こえてくることを「本当?」と疑ってかかる姿勢が大事です。特に医療というものは、人間が相手です。人に寄り添っているのが看護職なのです。その人のものとに行って見えることをそのまま見、聞こえることをそのまま聞き、感じられることをそのまま感じ取って、何が本当なのかつかむこと、これができるのが看護職です。看護職からの発信は、科学が本当としていることをより一層本当に近づけることにもいずれつながっていきます。今後も皆さんはたくさんの勉強を重ねる必要がありますが、目の前の人を知り、わかる力も大いに磨いていただきたいと思います。看護師になるにしても、保健師になるにしても、今後は素晴らしい先輩に出会い、素晴らしい医療チームに出会うことと思います。その中で生涯謙虚に勉強し、尊敬され手本とされる看護職に育っていただきたいと思います。
 保健や医療や福祉のシステムは、社会との関係によってその時々の形を変えます。皆さんが社会人になるこの時期は日本経済の先行きへの危惧、それに伴う社会システムの行き詰まりと変革への胎動など、重苦しいけれど目が離せない情勢となっています。このような状況の打開には、若い新鮮な力が希求されています。皆さん方に次の世を託したいという思いが高まります。保健や医療や福祉のシステムの中で働く専門家として、皆さま方の役割を発揮し、若い力で日本のこの現状を切り拓く原動力となって羽ばたいていただきたいと思います。
 最後に、修了生の皆さん、看護界は現在多様な看護職のキャリア発展の形が議論されております。皆さんにはさっそく、どのようなキャリアの形が望ましいのか考え意見を求められる機会が増えることと思います。看護実践や研究に根ざし、議論の先頭に立って、日本をリードしていっていただきたいと思います。
 本日は雨模様の日となりましたが、この大学のあるこの地、山、海、木々やキャンパスのたたずまい、すべてが卒業生、修了生の門出を祝ってくれているようです。
 卒業生、修了生の皆さん、本日は本当におめでとうございます。

学長 石垣 和子

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